エレキギターの各部名称

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弦の振動を電気的に増幅して出力するエレキギターが世に現れてから、これまでいくつものメーカーがギターの性能やデザインの改良を重ねてきました。
そのおかげで、現在では特徴の異なる様々なギターが世に出回り、私たちはそれらの中から予算の許す限り自由に選ぶことができます。
ここでは、それらエレキギターの構造や名称について紹介していきます。

エレキギターの外観

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エレキギターの各部名称
作者 GreyCat

エレキギターには、音量の増幅、音色の調整を目的としたボディ(9番)と、音程のコントロールを行うためのネック(7番)があります。
そしてギターの種類にもよりますが、おおよそ6本~12本の弦を持ち、ボディ側のブリッジ(12番)とペグ(3番)によって弦が固定されています。
右利き用のギターを左利き用ギターとして扱う場合は別ですが、基本的に6本の弦はギターを持った際に上側が一番太く音の低い弦となり、下に向かって順に細く音が高くなっていきます。
そして、ネックには指板、そして指板上にはフレット(4番)が打ってあり、音程を変えることができるようになっています。

ヘッド

ヘッド(1番)はペグにより弦の張力を調整し、調律するという役割があります。レイアウトとしては、3基ずつのペグを配した「3+3」と、一列に配した「6 in One」が一般的です。

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ヘッドの角度の違い
作者 Mikhail Yakshin

ヘッドには、ヘッドとネックに角度がほとんどあるいは全く付かないストレートと、メーカーにもよりますが一定の角度がつくアングルドがあります。
ストレートはフェンダー系統のギターに見られ製造が容易ですが、弦がナット(2番)の溝から外れないようにストリング・リテイナーと呼ばれる金具が不可欠です。
アングルドはギブソン系統のギターに見られ、ストレートとは異なった音色を生み出します。
また、ギターメーカーはギターやシリーズの見分けがつくように特徴的なヘッド形状をデザインしており、これもヘッドの役割の1つとなっています。
そのため、各ブランドのヘッドのパターンを知っていればブランドの予想がつくようになっています。

トラスロッド

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ヘッドにあるトラスロッドの調整部分
作者 Detlev Dördelmann

ネックにはトラスロッドと呼ばれる鉄の棒が埋め込まれています。これはギターのネックが反ってしまったときに反りを直すために調整される部分で、弓状に曲がった鉄の棒が使われます。
弦の張力によりネックには常にギターの表側に対する反り(順反り)の力がかかっていますが、トラスロッドがネックに逆反りの力をかけることで、力を相殺し、まっすぐにしているというわけです。

指板とフレット

指板はネックの表面に貼られた薄く長い木片で、この上にフレットが打たれ、弦が張られます。そして演奏時に押さえつけるフレットを変えることにより音程を変えることが可能です。また指版にはインレイでマークがされることがあり、上位機種のギターではメーカーごとに特徴が現れます。

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スキャロップド加工・指版
作者 LifeEnemy

一部のギターには押弦やヴィブラートのための力が低減できるスキャロップド加工がなされた指版があります。
軽いタッチで押弦が可能になり、チョーキングによる音程の変化が容易になる反面、少しでも強く押さえると音程が変わってしまうというデメリットがあります。
また、フレットの打ち直しが高価で、ネックが反りやすくなるというメンテナンス面での問題も抱えています。
フレットは使用に伴い摩耗していき、音に不要な振動(びびり)が乗るようになっていくため、フレットの打ち直しが必要となります。
そのため、フレットはトラスロッドと共にギターのメンテナンスにおいてはチェックしておくべき部分です。

ピックガード

ピックガード(13番)は楽器の塗装をピッキングによる傷から保護するための薄板です。
ただし、ギターのビジュアルを更に向上させるために修飾されることが多々あり、ボディとのコントラストが効いた色合いにされたり、合成樹脂の他に様々な素材が使用されます。

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ジャズギタリスト、ジョー・パスのサインとエピフォンロゴ入ったピックガード
作者 Rama

エレキギターでは、ピックガードを大別すると、フェンダー・ストラトキャスターのようにボディに直付けされるものと、ギブソン・レスポールのように高さ調整が可能な金属ブラケットで持ち上げられているものに分けられます。

ネックの種類

ギターのネックとボディを繋げる方式は、「ボルト・オン(デタッチャブル・ネック)」、「セット・ネック」、「スルー・ネック」の3種類があります。
これらは弦の振動に関わるので、修理のしやすさだけでなく音色にも影響を与えることが知られています。

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4点留めのボルト・オン(YAMAHA・PAC112)
作者 Meanos

ボルト・オン(デタッチャブル・ネック)

「ボルト・オン」は、その名の通りギターの裏側からネックとボディをネジで締める方式のことを言います。
この方式はフェンダーがエレキギターを安価に量産できるようになった秘密の1つであり、基本的にフェンダー系列のギターは現在でもほとんどがこのタイプに属します。

ボルト・オン方式の代名詞、フェンダーのストラトキャスター
ボルト・オンではネックとボディを簡単に分解できるので、どちらかが壊れてしまっても簡単に交換できるのが大きな利点です。
ただし、ネックとボディの繋がり方が正確でないと、音の高さに狂いが生じやすくなったり、ギターの振動が上手く伝わらなくなり音の響きや伸びが失われることがあります。

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セットネック(リッケンバッカー)
作者 Hohum

セット・ネック

「セット・ネック」は、ネックとボディがしっかりと噛み合うような構造を作り、それに強力な接着剤を使用することで2つを繋げる方式です。
この接着方法はボディとネックの繋ぎ目がギターの張力に耐えられるほどの強度を持つため、ネックの交換がより難しいことで知られます。

その一方で、ネックとボディの振動はほとんどダイレクトに伝わるので、音の伸びに優れます。こちらはエレキギターではギブソンのレスポールを代表として、その系列にある様々なギターで採用されています。

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スルー・ネック(Ibanez ST100)
作者 Joko471

スルー・ネック

「スルー・ネック」は読んで字の如くネックがボディを通り抜け、ギターの尾部まで伸びている方式です。
ギターの機種によりますが、ネックとボディの色のコントラストを強めているものも多くあり、デザイン面でも人目を引きます。
また、スルー・ネック方式ではより複雑な製造工程を辿るためか、大抵の場合は高級ギターに採用されています。

そしてその構造から、スルー・ネック方式はボルト・オン方式のようにネックを交換することが素人には難しく、塗装や補強、修理の際は費用が別途加算されることもあります。
しかし、ネックの振動がボディ全体に伝わりやすいので、サステインはこれらの中で特に優れている傾向にあります。

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エレキギターの各部名称(9番がストラップ・ピンとエンド・ピン)
作者 GreyCat

ストラップ・ピンとエンド・ピン

ギターは立ちながらでも座りながらでも演奏できる楽器ですが、そのためにはストラップでギターを担ぐ必要があります。
ストラップ・ピンとエンド・ピンはこのストラップを装着するためのピンで、金属製のネジがボディに埋め込まれている形でギターに付いています。

ちなみに、ストラップを装着した状態だと跳ねたり回ったりと激しいアクションも可能です。
しかし、演奏時にこういった激しいアクションを繰り返すとストラップが外れてしまう危険性があります。

ストラップ・ラバー

これを防ぐために、ストラップをより強く固定するためのロック式のピンや、上からストラップを押さえつけるストラップ・ラバーといったアクセサリーもあります。ストラップ・ラバーは安く、ピンを交換する必要がないので特に重宝されます。

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標準的なエレキギターの外観
作者 GreyCat

ナット(2番)

ボディ側でブリッジが弦を固定しているように、ヘッド側ではナットが弦を固定しています。
この厚みのある板状のナットは、硬い金属製のものから柔らかいプラスチック等のものまで様々な種類があります。
そして、ナットの材質や柔らかさによって、ギターの開放弦の音色やサステイン等が変わってきます。

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ストラトキャスター(2003年フェンダーメキシコ)のナットと.11ゲージの弦
作者 TorrentFox

また、ナットは種類や形、材質で弦の滑りやすさや弦を固定する強さが異なるため、アーミングやチョーキング後のチューニングのズレやすさにも影響を与えます。
ちなみに、ナットには弦を乗せるための溝が掘られているので、弦のゲージを変える場合はこの溝を広げたりナットそのものを変更しないと音がビビることがあります。

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ロック式ナット
作者 Rodrigo César

ペグ(マシンヘッド)(3番)

ペグ(マシンヘッド)はギターやヴァイオリンなどの弦楽器で使用される部品で、弦を巻きつけて楽器に固定し張力を保つ役割を担っています。
そして弦を固定している関係から、ペグは品質や劣化の度合いによりチューニングの狂いやすさに直結しています。

大別して、ギターに使用されるペグは軽くてシンプルな構造のクルーソン・タイプと、重く耐久性の高いロトマチック・タイプに分かれます。
この2つのタイプにはそれぞれ長所と短所があり、クルーソン・タイプは軽量なためヘッド側の重量を抑えることができます。
これはギターを担いだ時にヘッドとボディの重量バランスが悪いことで起こる、ヘッド落ちを防ぐことに役立ちます。

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ロトマチック・タイプのペグ
作者 Eugene Zelenko

一方、ロトマチック・タイプはギアやグリスがハウジングと呼ばれる構造部に密封されているため耐久性に優れます。
更に、こちらはペグのトルクを調節することができる構造を持ち、ペグ自体が重いので弦のサステインが伸びる傾向にあります。
しかしその分ヘッド側の重量が増すので、ボディとの重量のバランスが良くないギターも存在します。

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フェンダー系ギターに多いドット
作者 waterborough

ポジションマークとインレイ(6番)

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ギブソン系ギターに多い台形
作者 greefus groink and GreyCat

ポジションマークはフレットの高さを知らせるために指板の表面や側面に打ち込まれている印です。
標準的なポジション・マークはドットですが、実際には台形や長方形といった基本的な形から何かをモチーフにしたものまで、その種類は多岐に渡ります。

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高級ギターに施されることの多い複雑なインレイ
作者 Danomagnum

また、ポジションマークは奇数番目と12フレット目に入れられていることがほとんどで、多くのギターはこのルールに従っていくつかの場所にマークが打たれています。
ただ、指板に美しいインレイが打ち込まれていたり何らかのイラストが描かれているギターの場合は、マークが一部または全て省略されることがあります。
他にも、始めからマークが一切無いデザインのギターもあります。

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標準的なエレキギターの外観
作者 GreyCat

ネック(7番)

ギターの構造を大きく2つに分けると、音を増幅するためのボディと、弦を押さえて音の高さを決めるためのネックに分かれます。
ネックは木で作られており、表側にはフレットとポジション・マークが打ち込まれた指板が貼り合わされています。

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指板が上部にあり、内部にトラスロッドが組み込まれている標準的なネック
作者 Mikhail Yakshin

また、ネックは弦を支えているため常に強い力が掛かっており、この力を相殺するために内部には金属製の長い棒、トラスロッドが組み込まれています。
そして、ネックはギターは種類によって太さや塗装の種類・有無が異なるので、これらの違いが握り心地や滑りやすさ、演奏のしやすさに大きく関わります。

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プレートとネジで4点が留められているボルト・オンのヒール(YAMAHA・PAC112)
作者 Meanos

ヒール(8番)

ギターにおいて、ネックとボディの繋ぎ目部分はヒールと呼ばれます。
この部分は高いフレットを弾く際に左手に干渉するので、ギターの種類やデザインによってはカットされていたりなだらかになっていたりします(ヒールレス加工)。

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ヒールがなだらかなことの多いスルー・ネック・ジョイント(Ibanez ST100)
作者 Joko471

ヒールの出っ張りは、ネックの滑りやすさと合わせてリードギターの素早い演奏において重要なポイントです。
そのため、ギターの種類や状態によっては断られることがありますが、ギターの工房では修理だけでなくヒールレス加工のモディファイを注文することも可能です。

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左右対称に近い形を持つギブソン・SG
作者 Sellenman

ボディ(9番)

ボディはギターメーカー各社のデザインによって大きく変化するパーツの1つです。
ボディには様々なデザインがありますが、基本的には演奏時に体に干渉しないように側面がくぼんでいたり、えぐられているような形になっているものが多数です。

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B.C. Richの変形ギター、ワーロックモデル
作者 Phil Burton

また、エレキギターにはフルアコースティックギターやセミアコースティックギターといった内部に空洞を持つ構造のものもあります。
これらは音が太く丸くなり、生音が大きくなる反面、内部の空洞部分でハウリングを起こしやすいという弱点を抱えています。
ソリッドギターにはこういった弱点が無い代わりに、セミアコやフルアコのような特徴的な音色もありません。

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標準的なエレキギターの外観
作者 GreyCat

ピックアップ部(10番)

ピックアップはエレキギターの肝となる、弦の振動を電気信号に変換するためのパーツです。
このピックアップにはいくつか種類がありますが、大別するとフェンダー系列のシングルコイル・ピックアップとギブソン系列のハムバッキング・ピックアップに分かれます。
この2種類のピックアップのうち、シングルコイルは鋭く歯切れの良い音が特徴です。
一方、ハムバッキングはノイズに強く、出力が高めで太い音が特徴的です。
ちなみに、一部のギターのハムバッキングではタップすることで片側のピックアップを働かないようにし、シングルコイルのような音色に切り替えられるものもあります。

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シングルコイル(中央と右)とハムバッキング(左)
作者 Feitscherg

また、エレキギターにはピックアップが複数搭載されていることが多く、その場合はネック側からフロント、センター、リアピックアップと呼ばれます。
これらのうち、音色はフロントに近づくほど丸くなる傾向にあります。
そして、ピックアップの場所により弦の振幅が異なるため、信号の音量には大小が生まれてきます。
そのため、ギターによって異なりますが、各ピックアップのコイルの強弱が違っていたり、各ピックアップと弦の距離が異なることがあります。

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テレキャスターのピックアップ・セレクターと2つのノブ
作者 Vonvon

コントロール部(11番)

ギターのコントロール部には、基本的にピックアップを切り替えるためのピックアップ・セレクターとボリューム・コントロール、トーン・コントロールがあります。
こちらも実際にはギターの種類によりますが、搭載されているコントロールはフェンダー系列で1ボリューム1~2トーンとなっています。
その中で、ジャガーはフロント・ピックアップとリア・ピックアップのオンオフをそれぞれ切り替えるためのスイッチ、低音を切るためのローカットスイッチ、そして設定をプリセットのボリュームやトーンに切り替えるためのスイッチがあります。
また、ジャズマスターも同じようにプリセットのボリュームとトーン、切り替えスイッチがあります。

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4つのノブを持つ、ジョン・レノン・シグネチャーモデルのエピフォン・カジノ・レボリューション
作者 CasinoKat

ギブソン系列では2ボリューム2トーンとなっており、ピックアップ・セレクターを使用することで擬似的なトレモロ(スイッチング奏法)を行うことができます。
各ギターではこれらを操作することで、エフェクターやアンプとは別に音量や音色を調節することができるようになっています。

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レスポールのチューン・O・マチック・ブリッジとストップ・テイルピース
作者 Patrick Despoix

ブリッジ(12番)

ブリッジはネックにあるナットと同じくギターの弦を支えているパーツで、ギターの種類によってはビブラート・ユニットも併せて搭載されています。
ビブラート・ユニットはアームを使用して音程を連続して上下させることができる機構のことで、ストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロブリッジが標準的となっています。
また、レスポールのブリッジは、弦を乗せるチューン・O・マチック・ブリッジと弦を固定するストップテイルピースの2つで構成されています。
このタイプではアームを使用することができないので、テイル部分がビグズビーに交換されることがあります。

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シンクロナイズド・トレモロブリッジを支える背面のスプリング
作者 Andrewa

その他には、ナット部分をロックし、ブリッジを浮かせることでチューニングの狂いの問題を解消させたフロイド・ローズのトレモロ・ユニット等もあります。こちらはシンクロナイズド・トレモロを更に発展させた形状で、アームが軽く音程変化の幅が広いという長所があります。

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