エレキギターのピックアップの高さの調整

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エレキギターは弦の振動をピックアップにより電気信号に変換し、これをアンプで増幅し、スピーカーで出力することで楽器として成立しています。そのため、弦の振動に関わるギターの形や材質、音を拾うピックアップの種類、音の増幅に関わるアンプやエフェクター、スピーカーの数や大きさ等は音色に強く影響します。
これらの中でピックアップと弦の距離は、ギターアンプにマイクを立てたり歌った音をマイクで録音するときのように、エレキギターの音色に大きく影響します。ここでは、ピックアップの高さの調節方法とそのための基礎知識を説明していきます。

シングルコイルとハムバッキングの違い

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シングルコイルとハムバッキングの構造
作者 Lukas
エレキギターのピックアップは、一般的に大別してシングルコイルとハムバッキングの2つに分かれます。シングルコイルは爽やかで歯切れの良い音色が特徴的ですが、ハムバッキングのように2つのコイルで出力を稼ぎノイズを打ち消すような構造ではありません。そして、ハムバッキングは2つのコイルによる太い音色が特徴ですが、シングルコイルのような鋭さはありません。
音色だけでなく、この2種類のピックアップはその構造も異なっています。シングルコイルは円柱状のマグネットがそのまま表面に露出しており、相対的に表面での磁力の影響が強くなります。一方、ハムバッキングは底部に置いた磁石に2つコイルを接続しているため、相対的に表面への磁力の影響は弱くなります。いくつかのピックアップに何らかの金属を近づけてみると、磁力の違いが分かるはずです。

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PRSのハムバッキング、Dragon Trebleピックアップ
作者 Bloody Morty Vane from Lake havasu City, USA

ピックアップの高さと弦の振動への影響

金属でできた弦は常にピックアップの磁石の影響を受けています。この影響の強さはピックアップと弦との距離で大きく変わり、距離が近すぎると振動している弦が磁石に引っ張られてサステインが失われてしまったり、音にうねりが生じてピッチが狂ってしまうといったことがあります。
また、弦とピックアップの距離が遠すぎた場合、相対的にピックアップが弦の振動を拾いにくくなるため、音量が下がり音色が乾いた質感に変化します。この2つの適切な距離の幅はピックアップの磁力に影響するので、構造の異なるシングルコイルとハムバッキングではやや違いがあります。

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多くのピックアップに用いられているフェライト磁石
作者 Aney

ピックアップと弦の適切な距離の幅

ピックアップと弦の幅は、ギターの最終フレットを押さえた際の弦とピックアップとの距離を測ります。目安として、シングルコイルで代表的なフェンダー社は工場出荷時のピックアップの高さを、1弦で1.6mmから2.0mm、6弦で2.0mm~2.4mmとしています。またギブソンのレスポールでは1弦で1.6mm、6弦で2.5mm程度となっています。
例のように1弦と6弦で高さが異なるのは、弦はそれぞれ太さが異なり、最も太い6弦側では相対的に音量が大きくなる傾向があるためです。ギターのピックアップに左右で傾斜が付いているように見えるのはこれが理由です。そのため、実際にピックアップを調節する場合は1弦と6弦の音量差に注意し、1弦を少し高めに設定した方が各弦の音量バランスが良くなります。
しかし、最適なピックアップの高さに決まりは無く、これらはあくまで目安の値です。何故なら、ギターに搭載されているピックアップはそれぞれ種類も作りも品質も異なるためです。また、ピックアップの種類で音色が異なり好みが分かれるように、高さによる音色の変化にも人それぞれ好みがあるからです。

ピックアップの高さを調節する方法

ピックアップの高さは、ピックアップの左右にあるネジを回すことで調節することができるようになっています。この構造はシングルコイルもハムバッキングも共通ですが、固定方法にはいくつか種類があり、それによってネジを回す方向とピックアップの上下の方向が変わります。

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ピックアップカバーとポールピース
作者 Raphael Kirchner
また、ハムバッキングではポール・ピースの高さをマイナスドライバーで調整でき、各弦の音量差を細かく調節できます。ただ、こちらに関しては作業に終りが見えないので厳密な調整をしない限りは基本的に調節しなくても良いと思います。
そして、このピックアップの高さの調節はアンプで音を出しながら行います。できればアンプの設定を色々と変更しつつ様々なエフェクターを使用し、変更の影響を確かめながら調節していくと良いと思います。私はPODxt内にあるいくつかの気に入った設定や、所持するエフェクターの出音を聞きながら調節を行なっています。

ネック側とブリッジ側のピックアップの音量差

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ストラトキャスタータイプのシングルコイル3つのSSSレイアウト
作者 fitm
弦の振動は、中央からブリッジ側に近づくにつれて振幅が小さくなり音量が下がります。そのため、各ピックアップの音量差を無くしたい場合、ネック側からブリッジ側の順にピックアップを高くする必要があります。ただ、それぞれの音量を揃えるためにピックアップの高さを揃えると狙った音色が出せなくなる可能性があるので、これも好みの問題です。

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SSHレイアウト
作者 GreyCat

ピックアップを高くした場合

磁力との関係から、ピックアップを高くして弦との距離を詰めるほど音量が増加します。その影響で、音色はこってりとした迫力あるものへと変わり、歪み易くなります。ただし、弦の微弱な振動もピックアップが拾ってしまうようになるため、音量差(ダイナミックレンジ)はやや狭まり、コンプレッサーをかけた時のように音が潰れることもあります。
また、ピックアップを高くして音量を上げると、シールドやエフェクターから来るピックアップ由来ではないノイズとの音量差が大きくなります。そのため、アンプやエフェクターで音を歪ませる際にゲインを大きく上げる必要がないので、ノイズが相対的に目立たなくなります。

ピックアップを低くした場合

ピックアップを低くすると音量が低下しますが、大小様々な弦の振動を拾うことができるようになります。また、音色はシングルコイルよりで落ち着いたものとなり、音の伸びが良くなることもあります。その結果、ピッキングの強弱がつけやすくなるので、総合的にクリーントーンにマッチする傾向にあります。ただ、ピックアップを低くするほど高音域が減少し、あっさりした音に変化しやすい点に注意です。

ピックアップの高さによる音色の傾向

簡単にまとめると、ピックアップを高くするほどハムバッキングに近いパワプルな音色が得られ、これは歪ませた音にマッチする傾向があります。一方で、ピックアップを低くするほどシングルコイルに近いカラッとした音色が得られ、これはクリーントーンに合う傾向があります。ただ、好みや感性、エレキギターは人それぞれなので、これらはあくまで1つの意見として、自分の好きな音色に近づけることが大切です。

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