5分で読めます。
コード進行
G C/G | D/G G | C G/B | Am7 D |
Em F#m7-5 | B7/D# Em |
C G/B | Am7-5/F Am7-5/E♭ D7sus4 | G |
ディグリーネーム
Ⅰ Ⅳ/Ⅰ | Ⅴ/Ⅰ Ⅰ | Ⅳ Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7 Ⅴ |
Ⅵm Ⅶm7-5 | Ⅲ7/♭Ⅵ Ⅵm |
Ⅳ Ⅰ/Ⅲ | Ⅱm7-5/♭Ⅶ Ⅱm7-5/♭Ⅵ Ⅴ7sus4 | Ⅰ |
機能
T SD/T | D/T T | SD T/T | SD D |
T(平行短調へ一時転調) D | T(Ⅵに対するD)/SD T |
SD T/T | SD/SD(同主短調、Ⅳmを含む、♭Ⅶ9) SD(同主短調)/T D | T |
分析
今回はGの長調を主調とした、オンコードや平行短調への転調、同主短調の借用コードが登場する、優しさと暗さが同居しているユニークなコード進行です。まず第1、2小節では、「Ⅰ→Ⅳ/Ⅰ→Ⅴ/Ⅰ→Ⅰ」という形で全てのコードに主要和音でトニックⅠのルート音がベースに指定されています。これにより、ここでは安定艦と統一感が生まれています。
次に、 第3、4小節目では「Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7→Ⅴ」というコード進行が登場します。ここでは、サブドミナント終止によりⅠへ戻り、それからトゥーファイブ進行へと進む運びとなっています。更に、Ⅰ/ⅢによりⅣからⅡm7にかけてベースラインが滑らかに繋がるので、その響きはとても優しげです。
それから、第5、6小節目では「Ⅵm→Ⅶm7-5→Ⅲ7/♭Ⅵ→Ⅵm」とコードが進みます。これは平行短調で考えると「Ⅰm→Ⅱm7-5→Ⅴ7/Ⅶ→Ⅰm」となるので、一時的に転調していると考えるのが自然のようです。
この部分ではまず、コードが主要和音でトニックのⅥm(Ⅰm)から始まり、Ⅶm7-5(Ⅱm7-5)を経て、ドミナントのⅢ7/♭Ⅵ(Ⅴ7/Ⅶ)に至り、Ⅵm(Ⅰm)へと着地します。そのため、ここではトゥーファイブ進行のようなコード進行が成立している他、オンコードによりベースラインが滑らかにⅠへと戻れるようになっています。
そして、7、8小節目ではやや複雑な「Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ→Ⅱm7-5/♭Ⅶ→Ⅱm7-5/♭Ⅵ→Ⅴ7sus4」という進行が現れます。これらのうち、「Ⅳ→Ⅰ/Ⅲ」は3小節目と同一で、コード進行の統一を図るために登場したコードと考えられます。
それから8小節目の「Ⅱm7-5/♭Ⅶ→Ⅱm7-5/♭Ⅵ→Ⅴ7sus4」ですが、これは要素を1つずつ見ていくと、Ⅱm7-5は同主短調Ⅰmの第2のコードであることが分かります。そしてⅡm7-5は借用されることの多いⅣmを構成音に含んでいるので、響きにほとんど違和感はありません。
またⅡm7-5/♭Ⅶは一見正体が掴めないコードですが、ベースを含めて構成音を考えると、同主短調の♭Ⅶ9となっていることが分かります。そしてその次のⅡm7-5/♭Ⅵはトゥーファイブ進行の起点に似たコードで、ベースは前後のコードを滑らかに繋ぐコード構成音の♭Ⅵです。
こうしてⅡm7-5の構成音が一部保続し、8小節目の最後でコードはⅤ7sus4へと進みます。その後、このⅤ7sus4のsus4は解決されず、そのままトニックのⅠへと着地します。
まとめ
今回のコード進行では、トニックをオンコードに指定し続けた際の爽やかな雰囲気や、響きがガラリと変わる転調、そしてテンションとオンコードを組み合わせた同主短調の借用コードが印象的でした。
まず、特定のコード進行のベースを固定するオンコード(ペダル・ポイント)は、固定する音によって全体の雰囲気を大きく変えます。今回の場合はトニックがベースに固定されているので、その響きは明るく安定感があります。このような効果により、このテクニックはサビなどの他にもイントロで使用されることが多いようです。
また転調に関しては、最初のコードを転調先の主要和音のトニックにすると転調感がより強調されます。一方、これを避けると転調感を弱めることができるので、転調後にどのようなコードを選ぶかは慎重に吟味する必要があります。
そして、同主短調の借用コードにテンションとオンコードを組み合わせたⅡm7-5/♭Ⅶは、♭Ⅶ9と異名同音であり、コントロールが難しく魅力的ですが非常に不安定な響きです。しかし、ここでは「Ⅱm7-5/♭Ⅵ→Ⅴ7sus4」という形でオンコードとsus4を続けることにより軟着陸に成功しています。そのため、このコード進行はⅡm7-5/♭Ⅶを使用する際に大いに役立つはずです。