井上陽水/少年時代のBメロでも採用されているコード進行のパターンと分析

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コード進行

G#m7-5 C#7 | G#m7-5 C#7 |
C#m7-5 F#7 | Bm7 Bm7/A |
E7/G# | A | C#m7-5/G F#7 | Bm7 |
E7 | E7 |

ディグリーネーム

Ⅶm7-5 Ⅲ7 | Ⅶm7-5 Ⅲ7 |
Ⅲm7-5 Ⅵ7 | Ⅱm7 Ⅱm7/Ⅰ |
Ⅴ7/Ⅶ | Ⅰ | Ⅲm7-5/♭Ⅶ Ⅵ7 | Ⅱm7 |
Ⅴ7 | Ⅴ7 |

機能

D(平行短調のトゥーファイブ進行のⅡm7-5) T(平行短調のトゥーファイブ進行のⅤ7) | D T |
T(平行短調の下属調のトゥーファイブ進行のⅡm7-5) T(平行短調の下属調のトゥーファイブ進行のⅤ7) | SD SD/T |
D/D | T | T/SD(平行短調の下属調のトゥーファイブ進行のⅡm7-5) T(平行短調の下属調のトゥーファイブ進行のⅤ7) | SD |
D | D |

分析

今回はAの長調を主調とした、長調や平行短調、その下属調のトゥーファイブ進行と、オンコードが組み込まれている、穏やかですが影のある感動的なコード進行です。
まず、1、2小節目では「Ⅶm7-5→Ⅲ7→Ⅶm7-5→Ⅲ7」とコードが進行します。これはⅥmをⅠmとする、平行短調におけるトゥーファイブ進行「Ⅱm7-5→Ⅴ7」にあたります。Ⅶm7-5は三全音トライ・トーンをルートと5度に持つ複雑なコードですが、Ⅲ7とは完全4度上(5度下)の関係にあり、コードの響きにダイナミックな変化を与えます。
次に、3、4小節目では「Ⅲm7-5→Ⅵ7→Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅰ」というコード進行が現れます。このうち、「Ⅲm7-5→Ⅵ7」は平行短調の下属調のトゥーファイブ進行「Ⅱm7-5→Ⅴ7」にあたるものです。また、Ⅵ7はⅡを導く力があるセカンダリー・ドミナントで、次に登場するⅡm7と機能的に接続されています。そのため、その響きの変化はやはりダイナミックです。
それから、5、6小節目では「Ⅴ7/Ⅶ→Ⅰ」とコードが続きます。前の小節で登場した「Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅰ」はこの進行のためにあり、トゥーファイブ進行が成立しつつ、ベースラインが滑らかに接続されています。
そして、7、8小節目では「Ⅲm7-5/♭Ⅶ→Ⅵ7→Ⅱm7」という形でコードが進行します。ここでもオンコードにより転回形が作られており、前の小節のⅠから「Ⅲm7-5/♭Ⅶ→Ⅵ7」というようにベースラインが綺麗に下降しています。
また、「Ⅲm7-5/♭Ⅶ→Ⅵ7」を平行短調の下属調のトゥーファイブ進行「Ⅱm7-5→Ⅴ7」とみなした場合、前の小節のⅠは転調先の♭Ⅶと一致します。そのため、この一時転調にはほとんど違和感がありません。
その後、セカンダリー・ドミナントのⅥ7がⅡm7を導き、コードはトゥーファイブ進行によりⅤ7へと進みます。こうしてトニックを求めるドミナントの力により全体が引っ張られつつ、コード進行はここで一区切りつきます。

まとめ

今回のコード進行では、平行短調とその下属調のトゥーファイブ進行の借用が印象的でした。ⅦmだけでなくⅦm7-5を用いても、自然な形でⅢ7を呼び出すことができるようです。そしてこの場合、コードのサウンドは情熱的で粘り気があり、悲しさもある響きへと変化します。
そして、「Ⅰ→Ⅲm7-5/♭Ⅶ→Ⅵ7」として登場した、平行短調の下属調のトゥーファイブ進行とⅠの響きは、とても滑らかで暖かみがあります。これは、「ⅠとⅢm7-5」が「♭ⅦとⅡm7-5」でもあり、同じダイアトニック・コード上に存在するためです。違う見方をすれば、Ⅲm7-5はⅠ7(下属調のⅤ7)やⅤm(下属調のⅡm)と代理関係にあり、やはりⅠとの相性は良好です。

“井上陽水/少年時代のBメロでも採用されているコード進行のパターンと分析” への2件の返信

  1. にしん より:

    是非この曲の間奏部分も解説して欲しいです!

    1. kdm より:

      返信が遅くなってしまい、本当にすみません…
      間奏部分はクラシカルな良い雰囲気ですよね。
      分析が終わり次第追記するので、お待ちくださいね。

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