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楽器の演奏やボーカル等を録音する際、現在ではオーディオ・インターフェイスとコンピュータを利用することが非常に多くなっています。これはコンピュータの進化により可能になった新しい手法で、録音の時間やファイルサイズを気にすること無く高音質にレコーディングができるという特徴を持っています。
オリンパスのシンプルなボイスレコーダー、W-10
作者 Nicolas Esposito from France
一方、このコンピュータを利用する方法はシステムを構築する必要があるため手軽ではなく、ノイズを集音しやすいといった弱点もあります。そしてこのやや複雑なシステムを必要とするレコーディング方法と相対するものとしては、手軽で便利なハンディ・レコーダーを用いる方法があります。
Tascam製のレトロなMTR
作者 Iainf
特に近年では、ハンディ・レコーダーはSDカード等による大容量化が図られており、チップの高性能化、小型化によって複数の音源を録音、再生できる高機能なMTR(マルチトラック・レコーダー)機能も搭載されてきています。そこで、ここでは特に使い勝手がよく持ち運びもしやすい、高度なMTR機能付きのハンディ・レコーダーを紹介していきます。
MICRO BR BR-80 Digital Recorder Introduction
BOSS MICRO BR-80
様々な定番エフェクターでよく知られる、BOSSの小型ステレオMTRハンディ・レコーダーがBR-80です。BR-80はそのサイズからは想像できないほど高機能で、録音と再生が可能な8つのトラックにはそれぞれ仮想のトラック(Vトラック)があり、合計で64のトラックを同時に操作することができます。そして実際にはこの膨大なトラックを駆使し、内蔵のマイクや入力端子からギターやベース、ボーカルの録音を行なっていくことになります。
更に、本機はチューナーやメトロノーム、様々なジャンルに合わせたリズムトラックが収録されており、これらを利用すれば正確なリズムとチューニングでレコーディングが行えます。また録音時には、音を内蔵の楽器用またはボーカル用エフェクトで加工することができます。これらの録音したデータは、それぞれ1トラックとして扱われるので音量バランスの調整なども可能です。
MICRO BR: BR-80 Demo by Rob Marcello Musikmesse 2011
それから、エフェクトをかけながら音源を再生する機能もあり、これは楽器や歌唱の練習も行えます。その上、スピードやピッチの変更を利用できるので、楽器と本機があればどこでも集中して特定のフレーズ等を強化することができます。また、録音したトラックのABリピートを交えながらのWAVでのマスタリングも可能なので、これ一台で楽曲を作りこんでいくことが可能です。
更に、本機はオーディオ・インターフェイスとしても機能するので、コンピュータやDAWとの連携にも利用できます。この機能に対応するように、本機にはROLANDの技術が組み込まれたSONARのLE版が付属しており、より高度な楽曲制作も行えます。これらを踏まえると、本機は自宅でのレコーディングや練習に必要な機能の多くを備えている、非常に強力なアイテムだと言えます。
H4n PRODUCT VIDEO
ZOOM H4n
H4nはデジタルのマルチエフェクターメーカーとしてよく知られているZOOMが開発した、XLR端子とファンタム電源付きの多機能ハンディ・レコーダーです。特に印象的な構造として、こちらはマイク部分を回転させることで集音する範囲をソロに向いた90度からオーケストラに対応する120度へと広げることができるようになっています。
入力端子を見ると、こちらはXLRと標準フォンに対応した端子を2つ備えています。面白いことに、H4nではこの外部入力端子2つと内蔵のステレオマイクを組み合わせ、同時に4chをレコーディングすることが可能です。そして本機はファンタム電源を備え、アンプやエフェクターのシミュレーターとしても機能します。そのため、いくつもの楽器やボーカルを様々な方法で接続し、別々に録音することができます。
Zoom H4n handheld recorder used with Cannon 7D DSLR camera
特に、本機は電池で駆動しますがファンタム電源を備えているので、様々な場所でダイナミック、コンデンサーを問わないマイクの使用を可能にします。また、本機にはピッチやスピード、センターキャンセルが行えるカラオケモードもあります。このファンタム電源とカラオケモードを駆使すれば、コンデンサー・マイクを使用しながら、手軽に好きな音源に声や演奏を重ねて録音することができます。
そしてBR-80と同じように、本機は使い勝手に優れるMTRとオーディオ・インターフェイスといった機能を備えています。またBRと対になるように、本機にもDAWソフトのバンドルバージョンであるCubase LEが付属しています。Cubaseはソフトウェアの安定性に定評があり、LE版であってもレコーディングした音源の編集や加工に役立ちます。
H4nもまた、これ一台で様々なことが行えるようになる、汎用性の高いハンディ・レコーダーです。ただ、H4nの場合はファンタム電源を供給すると電池を著しく消耗するので注意が必要です。ACアダプタを使用出来る場面では、こちらから電源を供給したほうが良いかもしれません。