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コード進行
B6 | D#m7 | F#m7 | EM7 |
C#m7 Em7 | D#m7 G#m |
EM7 | C#m7 F#13 | B6 |
ディグリーネーム
Ⅰ6 | Ⅲm7 | Ⅴm7 | ⅣM7 |
Ⅱm7 Ⅳm7 | Ⅲm7 Ⅵm |
ⅣM7 | Ⅱm7 Ⅴ13 | Ⅰ6 |
機能
T(Ⅵm7でもある、長6度(長13度)を持つ) | T | D(Ⅰ7とⅣM7を導く下属調のトゥーファイブ進行の起点Ⅱm7、ドミナント・マイナー) | SD |
SD SD(サブドミナント・マイナー) | T(Ⅵに対する短調のD) T |
SD | SD(トゥーファイブ進行の起点) D(長9度と長13度を持つテンション・コード) | T(Ⅵm7でもある) |
分析
今回はBの長調を主調とした、明るく鋭く眩しい響きが特徴的な、ボサノバ風のコード進行です。テクニックとしては、シックス・コードⅠ6、ドミナント・マイナーⅤm7、サブドミナント・マイナーⅣm7、平行短調のドミナント終止「Ⅲm7→Ⅵm」、トゥーファイブ進行、テンション・コードⅤ13が登場します。
まず、1、2小節目では「Ⅰ6→Ⅲm7」というコード進行が登場します。このうち、Ⅰ6はⅥm7の異名同和音でもあり、物憂げな響きが印象的です。大きな特徴として、このシックス・コードでは長3度と長6度の音が完全4度の音程にあります。この完全4度の音程は独特な緊張があることで知られ、ジャズやボサノバといったジャンルで多用されています。
次に、3、4小節目では「Ⅴm7→ⅣM7」と進行します。このうち、Ⅴm7はドミナント・マイナーと呼ばれ、Ⅳをトニックとする下属調のトゥーファイブ進行の起点Ⅱm7として機能します。このような理由から、Ⅴm7(Ⅱm7)はⅠ7(Ⅴ7)を経由し、Ⅳ(Ⅰ)へ進もうとする性質があります。ただし、Ⅰ7は省略されることも多く、その場合は今回のように直接Ⅳへと進行します。
それから、5、6小節では「Ⅱm7→Ⅳm7」という進行が現れます。このうち、Ⅳm7はサブドミナント・マイナーと呼ばれる同主短調からの借用コードです。Ⅳm7はコード進行に切ない雰囲気をもたらすことで知られています。また、ここではサブドミナント代理のⅡm7から短調のサブドミナントのⅣm7へ進むことで、眩しく開放的で、裏返るような意外性のある響きが生まれています。
そして、7、8小節目では「Ⅲm7→Ⅵm」というカデンツが登場します。これは平行短調のサブドミナント終止でもあり、コードが完全4度上(5度下)で動くので強い展開感があります。
その後、9~11小節目では「ⅣM7→Ⅱm7→Ⅴ13→Ⅰ6」とコードが進行します。このうち「Ⅱm7→Ⅴ13」は、Ⅴ7にテンションを加えたトゥーファイブ進行です。音の並び(ヴォイシング)によって変化しますが、Ⅴ13もまた短3度と長6度(長13度)、長6度(長13度)と長9度という完全4度の音程を持ちます。これにより、ボサノバ、ジャズ風の刺激的で特徴的な響きが生まれています。
こうして、最後はテンション・コードを交えたトゥーファイブ進行によりⅠ6に着地し、やや浮ついた雰囲気のまま一段落します。
まとめ
今回のコード進行では、完全4度の音程を内部に持つⅠ6とⅤ13、ⅣM7を機能的に導くⅤm7、切ない雰囲気のⅣm7などが登場しました。ボサノバはリズムも印象的ですが、コード面では完全4度の音程が大きな特徴となっています。そのため、今回のように冒頭や末尾といった印象が残りやすい箇所でⅠ6やⅤ13を用いると、ボサノバの軽やかで物憂げで浮ついた雰囲気が強まります。
また、Ⅴm7とⅣm7はそれぞれ近親調のコードであり、雰囲気をよりドラマティックで感情的で魅力的なものへと変化させます。更に、これらは比較的利用しやすい借用コードなので、使い方とその響きを覚えておくと進行を考える際に役立つはずです。