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コード進行
AM7 | B/A | G#m7 | C#m7 |
F#m7 | G#7 | C#m7 | C#7 |
AM7 | B | G#m7 | Gdim |
F#m7 | G#m7 | Am7 | Bm7 |
CM7 | C/D | D/E | CM7/E |
ディグリーネーム
ⅣM7 | Ⅴ/Ⅳ | Ⅲm7 | Ⅵm7 |
Ⅱm7 | Ⅲ7 | Ⅵm7 | Ⅵ7 |
ⅣM7 | Ⅴ | Ⅲm7 | ♭Ⅲdim |
Ⅱm7 | Ⅲm7 | Ⅳm7 | Ⅴm7 |
♭ⅥM7 | ♭Ⅵ/♭Ⅶ | ♭Ⅶ/Ⅰ | ♭ⅥM7/Ⅰ |
(15小節目以降は短3度上の長調に転調していると考えることもできる)
(Ⅱm7 | Ⅲm7) | Ⅱm7 | Ⅲm7 |
ⅣM7 | Ⅳ/Ⅴ | Ⅴ/Ⅵ | ⅣM7/Ⅵ |
機能
SD(王道進行の起点) | D/SD | T | T(Ⅱに対する短調のD) |
SD | T(Ⅵに対するD) | T | T(Ⅱに対するD) |
SD(王道進行の起点) | D | T | (経過和音) |
SD | T | SD(サブドミナント・マイナー、Ⅲm7からスライド) | D(ドミナント・マイナー、Ⅳm7からスライド) |
T(同主短調の第6のコード) | T/SD(同主短調の第6のコードと第7のベース、♭Ⅵadd9でもある) | SD(同主短調の第7のコード)/T(♭Ⅶadd9でもある) | T(同主短調の第6のコード)/T |
(15小節目以降は短3度上の長調に転調していると考えることもできる)
(SD | T) | SD | T |
SD | SD/D(Ⅳadd9でもある) | D/T(Ⅴadd9でもある) | SD/T(サブドミナントでの完結) |
分析
今回はEの長調を主調とした、明るさの中にときおり影が差す、ドラマティックな響きのコード進行です。テクニックとしては、王道進行、オンコード、完全4度上(5度下)の動きを利用した短調のドミナント終止、セカンダリー・ドミナント、dim、同主短調の借用コード、短3度上の長調への転調が登場します。
まず、1~4小節目では「ⅣM7→Ⅴ/Ⅳ→Ⅲm7→Ⅵm7」とコードが進行します。これは、ヒット曲ではお馴染みの王道進行「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm」を全て4和音にし、オンコードを用いたカデンツです。このうち、4和音化は響きをより複雑で眩しくし、オンコードはドラマティックな響きを抑えるのに役立っています。
次に、5~8小節目では「Ⅱm7→Ⅲ7→Ⅵm7→Ⅵ7」というコードが現れます。このうち、Ⅵを導くセカンダリー・ドミナントのⅢ7は、次のⅥm7と機能的に接続されます。また、Ⅵm7はⅡを呼び出すセカンダリー・ドミナントⅥ7へと変化しますが、着地先はⅡm7ではなく、その代理元のⅣM7です。
そして9~12小節目では、1~4小節目に似た「ⅣM7→Ⅴ→Ⅲm7→♭Ⅲdim」が登場します。1~4小節目や王道進行と比べると、こちらではⅤのオンコードが取り払われ、よりダイナミックな響きになっています。また、Ⅵm7の代わりに置かれている♭Ⅲdimは、♭Ⅲと半音で接する音を2つ、全音で接する音を2つ持つ経過和音です。
それから、13~16小節目では「Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm7→Ⅴm7」とコードが進行していきます。このうち、Ⅱm7は前小節の♭Ⅲdimと共通の音を2つ、半音で接する音を2つ持つので、コードが滑らかに繋がっています。
そして、15小節目以降はやや複雑で、短3度上の長調へ転調していると解釈することもできます。ここではまず、転調していないと考えた場合のコードの機能を見ていきます。
短3度上の長調へ転調していないと考えた場合、13~16小節目ではⅡm7からⅤm7までコードが形そのままにスライドしていることになります。そして、この過程ではⅣm7とⅤm7が出現します。このうち、Ⅳm7は同主短調から借用した第4のコードで、切なさをもたらすことで知られます。
また、Ⅴm7は下属調のトゥーファイブ進行の起点Ⅱm7、または短調のドミナントであり、Ⅰ7やⅠmを導きます。そして今回の場合は、Ⅰmの代理コードで構成音を全て内包している♭ⅥM7に着地し、いくらかの機能的な繋がりと解決感が得られています。
その後、17~20小節目では「♭ⅥM7→♭Ⅵ/♭Ⅶ→♭Ⅶ/Ⅰ→♭ⅥM7/Ⅰ」と進行します。ここでは、同主短調の借用コードが多用され、♭ⅥM7が♭Ⅵadd9でもある♭Ⅵ/♭Ⅶへと変化します。そしてそのままコードとベースが上昇して♭Ⅶ/Ⅰとなります。こうして最後は、コード部分がトニックの代理で同主短調の借用コード、ベース部分が主要和音でトニックの♭ⅥM7/Ⅰへ至ります。
このように、転調していないと考えた場合は、同主短調から借用したメジャー・コードが多用され、調性が曖昧になりながらも明るい響きが続きます。そして、トニック代理の♭ⅥM7/Ⅰにより、やや暗い響きとともにコード進行は終わりを迎えます。
一方、15小節目以降が短3度上の長調に転調していると解釈すると、コード進行は「Ⅱm7→Ⅲm7→ⅣM7→Ⅳ/Ⅴ→Ⅴ/Ⅵ→ⅣM7/Ⅵ」という形になります。こちらはいくらかシンプルで、Ⅱm7からⅣM7まではダイアトニック・コードに従ってコードが上昇していきます。
そして、次はベースが先行し9度が付加される形で「Ⅳ/Ⅴ→Ⅴ/Ⅵ」と進みます。それから最後は、コード部分はサブドミナントを、ベース部分はトニック代理を持つⅣM7/Ⅵが現れます。こうして、やや曖昧で煮え切らない雰囲気のまま、コード進行は一区切りが付きます。
まとめ
今回のコード進行は、王道進行、完全4度下(5度上)の動き、dimを利用したドラマティックな前半と、同主短調の借用コードや短3度上の長調への転調を感じさせる、明るく爽やかながら曖昧で暗さもある後半とで構成されていました。このうち、前半で登場するテクニックはどれも定番のものなので、覚えておいて損はありません。
また、後半はいくつかの解釈ができるコード進行ですが、他調のコードが組み込まれ、明るさと爽やかさが更に拡張されているのは共通しています。この性質は、同主短調を交えたカデンツ「Ⅱm7→Ⅲm7→Ⅳm7→Ⅴm7→♭ⅥM7→♭Ⅵ/♭Ⅶ→♭Ⅶ/Ⅰ→♭ⅥM7/Ⅰ」や、転調の起点である「(Ⅱm7→Ⅲm7)→Ⅱm7→Ⅲm7→ⅣM7」を覚えておくと、利用することができます。